たらし文句に淡く灯がともり、破廉恥に街は暮れて行く
サタニストの酌に酔いしれて、破廉恥に街は暮れて行く
カラス色のコートの襟を立て コミュニケイト嫌いを装えば、オカチメンコが俺を子招いて、火サスティックに夜は加速する
あー、
あれは先週か先々週の性曜日、マスラオも愛も売っ払っちまったよ
あー、
誰もそんな爆ぜ色の街で、純潔にソッポ向いて擦れ違って行く
刺さったままの後ろ指も、唇で粉化する苦汁も 「見えてない体」にしてはもらえず、誰もかれもがそれを舐めたがる
八つ当たって蹴飛ばす空き缶が、その筋の方に命中する
黒いコートの襟を掴まれて、火サスティックに夜は加速する
あー、いつもそんな猿色の事情で、優しい人の顔を曇らせて来た
ねー、俺も捕まえて虚言畑の上
ねー、どうかいっそ抱き締め殺してよ
寂れた薬局の蛙さえ俺を嘲笑う
「少し黙ってろ、証明の途上だ」と吐き捨てて、ただれた脳で夢を見てる
いずれ止まってしまう自分へ、誰をも逆恨んじゃ居ません様に
あー、俺もそんな爆ぜ色の街で、現実にソッポ向いて擦れ違って行く
場末は中繁盛 花盛りではあるが品性の無い女達の勧誘声に
丁重にノーサンキュー 口角の片側だけ吊り上げニヒル口で夜を歩く俺、と俺の影
人恋しくなって、或いはポケットの中 泡いてる小銭の捨て場に困って
この街で三番目に器量の悪い女に誘われるまま雑居ビルの5階へ
着席と同時に『おにーさん、なんか歌って』って云う
ここは阿久悠に習い、笑って十八番を歌えば
『わーすごいプロみたい』って世辞
キャバレー・クラブ・ギミック 頭の中すべて空っぽにすれば楽しいっちゃあ楽しい
キャバレー・クラブ・ギミック どういう了見でこの安物のウィスキーがそんな値段になるのか
場末の三原則 呑んで買って鬱になって 気付けば二十五時の路地裏の上
したたかに酩酊して 女と交わしたわずかな言葉が頭の中浮かんで消える
『他に綺麗な娘いたのになんで?』って永久に続く問いに
『初恋の人に似てるからさ』ってついた嘘と
『えーモテそうなのに!』って世辞
キャバレー・クラブ・ギミック この薄明かりの中、目を細めりゃ可愛いっちゃあ可愛い
キャバレー・クラブ・ギミック 理屈っぽい性分と 妙な自尊心が邪魔で笑えもしないのさ
赤い目眩に揺れる摩天楼の突先が夜空を今にも貫通しそうさ
キャバレー・クラブ・ギミック 頭の中すべて空っぽにすれば楽しいっちゃあ楽しい
キャバレー・クラブ・ギミック どういう了見でこの安物のウィスキーがそんな値段になるのか
メイクラブ・ギミック 善良な中年の欲求は狂った思春期の熱を帯びる
サタデー・ナイト・ミミック 勘定の時に見た あどけない八重歯がやけに染み付く夜
飛べない鳥のあざとい看板 量販店の駐車場
安いホラー映画の冒頭で伏線も無く死ぬ様な
ヤンキーズカーが行き交う
贔屓の球団の野球帽を深く被った小学生と
手を繋いで歩く老人に容赦なく鳴る警報
ヤンキーズカーが行き交う
車に関心の無い俺でも解る位に
明らかな改造車が夜の闇に消えて行った
だからBaby 俺はずっと感情の無いフリをしてたんよ
夜はヤンキーズシンコペーション
目が合いそうで、只々狼狽
女が歌うテーマがループする量販店の駐車場
間抜けな長調を掻き消すウーハー 重低音のレゲェミュージック
ヤンキーズカーが行き交う
流行に頓着ない俺でも解る位に
悪趣味なスウェットの上下 派手な金の筆記体
だからBaby 俺はずっと感情の無いフリをしてたんよ
夜はヤンキーズシンコペーション
目が合いそうで、 只々狼狽
するとどうだい、奴さんと来たら入口付近でたむろ
ダルマさん転びっ放しで 俺、動けずに只々狼狽
ヤンキーズカーが行き交う